福利厚生がない会社は存在するのか?今後衰退しないための制度とは?

福利厚生は従業員の健康や働きがい、モチベーションの向上だけでなく、企業の経営状況や採用にも多大な影響を与えます。では、福利厚生が「ない」場合や「充実していない」場合は、どのようなリスクがあるのでしょうか。

この記事では、福利厚生がない場合のリスクに加え、会社として従業員に喜んでもらえる福利厚生の内容について解説します。

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福利厚生がない会社はどうなる?

福利厚生がない会社は法令違反。法令によって全ての会社は法定福利厚生を提供しなければなりません。法令に違反した場合、会社は罰則を受けることになります。

法令で定められている法定福利厚生とは?

福利厚生は「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに区分されます。

法定福利厚生: 国および自治体の法によって定められた、会社が従業員に対して提供しなければならないサービスや制度。たとえば、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険など

法定外福利厚生: 会社が任意で、法定福利厚生の他に提供する追加の福利厚生。たとえば、健康保険の拡大、退職金制度、社宅や寮の提供、保養施設のアクセス、子育て支援制度など

日本企業の福利厚生に関する現状 

労働政策研究・研修機構が2020年7月に発表した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」では、全国の10人以上規模の民間企業1万2,000社に対し福利厚生の実施状況の調査を行いました。結果として、48項目について「ある」と答えた福利厚生の割合は、「慶弔休暇制度(90.7%)」、「慶弔見舞金制度(86.5%)」「病気休職制度(62.1%)」の順で導入されていました。

引用:労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―」

施策・制度ごとに実施・導入が「ある」と答えた企業のうち、非正規従業員へも福利厚生の適用をしている企業に実施している施策を尋ねると、調査全体では低かった次の施策の割合が高くなりました。

  • 食事(食事手当など)
  • 健康管理(運動施設・フィットネスクラブの利用補助など)
  • 両立支援(治療と仕事の両立支援策など)
  • 働き方(ノー残業デー等の設置など)

この調査から、企業で導入されている法定外福利厚生の状況は以下のようにまとめられます。

  • 法定外福利厚生がある企業が実施しているのは「休暇制度」「慶弔災害」関連が多い
  • 非正規従業員も適用している企業では、全体では実施が少なかった「食事」「健康管理」「両立支援」や「働き方」関連の取り組みが多い

この調査から、非正規雇用労働者の増加など就業構造が変化するなか、「休暇制度」など一般的な制度のほかに、企業が実施する福利厚生項目は多様化しているといえるでしょう。

福利厚生がないことで発生するリスク 

ここでは、十分な福利厚生がないことによってどのようなリスクが発生するのかについて解説します。考えられるリスクは以下のとおりです。

  • 自社の生産性が落ちる
  • 採用難に陥る
  • 離職率が高まる

それぞれについて、順番にみていきましょう。

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自社の生産性が落ちる

従業員が満足できる福利厚生が提供されていない会社では、従業員の不満が積み重なり、結果的に勤労意欲の低下につながる可能性が高まります。

仮に、仕事にやりがいを感じられていても次のような場合には、従業員の労働意欲や満足度は低下していきます。

  • コミュニケーション不足や設備が充実していないなど働きにくい環境が続いている
  • 多様な働き方や率先して行う体制がない
  • 評価制度が整っていない

あくまでも福利厚生は労働に付随する追加施策です。しかし、それが従業員の生活や家族、健康などに対してプラスの効果をもたらします。

たとえば、健康をサポートする福利厚生がない場合、従業員の中で慢性的な疲れや健康不調を抱えている人が見過ごされてしまう可能性があります。これにより従業員の集中力低下や病欠が頻繁に発生し、企業としての生産性の低下につながるケースも想定されます。

福利厚生が十分でないと、従業員は日々の生活や職場の環境に対して、ストレスや不満を抱きやすくなり、それらが欠勤や退職につながるケースもあるでしょう。家族を持つ従業員に対するサポートが不足している場合は、家庭内の事情で急な欠勤が増える可能性も考えられます。

採用難に陥る

福利厚生が不足している場合、採用難に陥る可能性も高くなります。その理由は次のようなものです。

  • 賃金が同程度でも福利厚生によって他社と差が生まれてしまう
  • 採用市場で魅力が伝わりにくくなってしまう

少子高齢化の進行とともに、日本の生産年齢人口は減少しており、企業の人材獲得は一層厳しくなっていきます。福利厚生の実施の有無は、他社との差別化につながり、さらに企業にとって社員を大切に考えていることのアピールにもなります。

新卒採用だけでなく、中途採用においても、福利厚生は他社と比較される項目のひとつです。求職者が複数の企業を比較検討する場合に、自社を選んでもらう要素として福利厚生を充実させることは大切です。

離職率が高まる

福利厚生制度の不足は、従業員が転職する原因になりえます。

福利厚生がない場合、十分なコミュニケーションをとる機会が与えられなかったり、労働環境に不満を抱いたりして、入社したての従業員が会社に馴染めず早期離職してしまう可能性があります。採用コストをかけて雇用したにもかかわらず、短期間での離職が発生するリスクの増加も否定できません。また、従業員の離職が続くと職場の雰囲気の悪化や不健康な労働環境となっていくことも想定されます。

福利厚生の不足によって、従業員のストレス増加やメンタルヘルスの問題が生じる可能性もあることから、企業は福利厚生を重視し充実を図る必要があります。

企業が福利厚生を充実させるメリット 

企業が福利厚生を充実させれば、以下の恩恵を受けられます。

  • 採用活動時に「自社の強み」の一つになる
  • 従業員の健康管理を行えるようになる
  • 節税効果がある

それぞれについて、解説します。

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採用活動時に「自社の強み」の一つになる

福利厚生がしっかりしている企業は、求職者にとって待遇が良いと見られるため、採用活動における魅力的なポイントとなります。採用で大手企業が人気となる理由は、最先端の事業や給与だけでなく、福利厚生の充実度も大きく影響しているといえるでしょう。

実際、家賃補助やジムなどの運動施設との連携といった福利厚生を充実させるには、安定した経営基盤が必要です。そして、充実した福利厚生によって外部に対して強固な企業であることを示す証明にもなります。

福利厚生をより向上・改善することは、企業の経営状態が良好であることをアピールすることにもつながります。

従業員の健康管理を行えるようになる

福利厚生の中には、ヘルスケアに関連するものが多く含まれています。例を挙げると、定期的な健康診断やストレスケア、リフレッシュ休暇などです。

とくにメンタルヘルスに焦点を当てた福利厚生の導入は、従業員の心身の健康だけでなく、企業へのエンゲージメントや満足度を高める効果があります。健康を意識した福利厚生によって、健康経営の推進と生産性の向上が期待されるでしょう。

節税効果がある

企業は、従業員への福利厚生の費用を経費として計上可能です。そのため、課税対象となる所得が減少し、法人税が軽減されます。

福利厚生の費用は企業側だけでなく、従業員にもプラスの効果があります。給与の代わりに福利厚生を提供することで、所得税の負担が軽くなるためです。たとえば、給与で支給される通勤費などを福利厚生で補完することができれば、税金の負担を軽減できます。
給与の高さだけでなく、福利厚生の充実度も求職者や従業員にとっての待遇の良さとして受け入れられるといえます。

法定福利厚生以外で「社員に喜ばれる」福利厚生とは 

法定福利厚生以外で、従業員から喜ばれる福利厚生としては、以下の項目などが挙げられます。

  • 住宅補助
  • 勤務時間・休暇関連
  • 食事関連
  • 医療・健康補助
  • 慶弔・災害関連

詳細をみていきましょう。

住宅補助

住宅補助は、従業員の住居に関する費用をサポートする制度です。毎月の家賃補助や住宅ローンの金利補助、社宅や寮の提供などが含まれるケースが多いといえます。

従業員にとってのメリットは、住居に関連する負担が軽減され、安定した生活基盤を持ちやすくなる点です。また、新しい住まいを得る際の負担や転勤時の不安も低減されます。

勤務時間・休暇関連

勤務時間・休暇関連の福利厚生は、従業員の働き方や休み方に対してサポートを実施するというものです。たとえば、フレックスタイム制度や有給休暇、産前・産後や育児や介護に関する特別休暇などが含まれます。

従業員の立場からすれば、ライフステージや個人的な事情に合わせて柔軟な勤務形態を選択できるようになります。そのため、ワークライフバランスが向上し、精神的な負担が軽減されるといえるでしょう。

食事関連

食事関連の福利厚生は社員食堂の提供、食事補助金、外食時の経費補助など、従業員の食生活をサポートする制度です。これによって、従業員の経済的負担を軽減できます。そのため、結果として健康的かつバランスの良い食事を取ることが容易になります。

また、企業によっては、従業員同士の親睦会の食費を負担する制度を採用していることもあります。これにより、社員同士の関係性が深まり、働きやすさや会社や同僚に対する信頼感などが育まれ、従業員エンゲージメントの向上につながることが期待できます。

医療・健康補助

医療・健康補助の福利厚生は、従業員の健康を維持・向上させるための取り組みです。定期的な健康診断、フィットネスジムの会員費補助、心理カウンセリングなどが該当します。

従業員の健康を保つことで、長期的な働き手としての活躍が期待できるとともに日常生活の質も向上するでしょう。

慶弔・災害関連

従業員の人生の大切な節目や困難な時期をサポートするための制度です。結婚や出産の際の祝い金、家族の不幸時の弔慰金、災害時の支援金提供などが該当します。従業員は、精神的・経済的な安定感を感じることができるでしょう。

まとめ

福利厚生を整えれば、従業員の生産性やモチベーションがアップし、企業自体の業績アップにもつなげられます。とくに、現代の労働市場では、求職者は給与だけでなく、福利厚生の内容や質も重視される傾向にあるといえます。

福利厚生は単なる「待遇」としての側面だけでなく、企業の経営理念やビジョンを示す要素でもあります。企業として福利厚生の導入を充実させることで、優秀な人材を確保し、長期的な業績向上の実現が期待できるでしょう。

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