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スタートアップ企業の「1人目人事」として私が行ったこと| #3 ビビッドガーデンHR佐藤薫氏

スタートアップが採用を始める際、体制はゼロベースから構築しなければいけません。何から手をつければ良いのか、定石があるとすれば、どこから取り組めばよいのでしょうか。

『NEXT UNICORN RECRUITING』では、世間から注目されるスタートアップにインタビューを行ない、各フェーズの戦略や取り組みを紹介しています。第3回目となる今回、お話を伺うのは株式会社ビビッドガーデンの佐藤薫氏。大手エージェントから外資企業、スタートアップまで、さまざまなフェーズの企業において、ビジネスサイドからコーポレートまで幅広く経験しており、同社には1人目の人事として入社。ゼロベースから採用体制を構築しています。入社から現在までの施策を振り返り、スタートアップの1人目人事が押さえておくべき「採用の基本」を探りました。

佐藤薫 Profile - Wantedly
株式会社ビビッドガーデン HR 大学卒業後、大手アパレル企業に就職。現場のプレイングマネージャーを経験する中で、人材育成の重要性、そして面白みを感じ、HRにキャリアチェンジ。 大手人材エージェント、外資企業、ITベンチャーを経てフリーランスに。 BizDevからコーポレートと様々な場面を経験してきたことを強みに、「事業成長に貢献する人事」を体現していきたいと思います。 人事は基本全般網羅していますが、その中でも得意領域は ・採用 ・0⇨1の立ち上げ ・1⇨10⇨100の仕組みづくり ・労務 です。 サブの
https://www.wantedly.com/users/96535711
株式会社ビビッドガーデンHR
佐藤 薫氏

大学卒業後、大手アパレル企業に就職。現場のプレイングマネージャーを経験する中で、人材育成の重要性と面白みを感じ、HRにキャリアチェンジ。大手人材エージェント・外資企業・ITベンチャーを経てフリーランスに。ビビッドガーデンには2020年11月にジョイン。BizDevからコーポレートなど、さまざまな場面を経験してきたことを強みに「事業成長に貢献する人事」を体現している。

入社当時の役目は「採用課題の可視化」だった

――本日はよろしくお願いします。はじめに、貴社の事業について教えてください。

ビジョンは「生産者のこだわりが正当に評価される世界」をつくること。そのために、私たちは生産者と消費者を直接繋げる産直ECサイト「食べチョク」を運営しています。「食べチョク」の登録生産者数は現在3,700軒を超え、20,000点以上の商品が出品されています。取り扱っているものは野菜や肉、魚介、酒、生花などさまざまです。

――2020年にはテレビCMも放映されていましたね。創業から着々と成長されていますが、現在は何人が働いているのでしょうか。

現在は経営陣3人と、正社員20人が在籍しています。エンジニア・セールス・マーケティング・カスタマーサポート等の事業部門をはじめ、広報・総務・企画などコーポレート部門まで、一通りの人材が揃っています。

ビビッドガーデン社の職種・年代別組織表

――佐藤さんは2020年11月に「1人目人事」としてジョインしたとお聞きしています。なぜ入社を決めたのでしょうか。

実を言うと、「食べチョク」を知る前は一次産業とはまったく接点がなく、課題感についての認識も薄かったです。しかし、実際にプロダクトに触れ、自分でも一次産業の抱えている課題を調べる中で、「こんなにもペインやニーズが山積しているんだ」と意識は変わっていきました。その後、創業者の秋元らとミーティングを重ねるうちに、どんどん引き込まれていって。主体的に「一次産業の課題解決」に関わりたくなったのです。

ーー入社された後、当時のビビッドガーデンはどのような採用課題に直面していたのでしょうか。

私が入社するまで、ビビッドガーデンに専任の採用責任者はいませんでした。採用課題そのものが見つけられていない状況で、メンバーが他ポジションと兼業しながら採用活動を進めている状態だったんです。

――明確な仕組みがなく、手探りで採用が進められていたのですね。

そうですね。必要なポジションは明確でしたが、採用における方針・戦略は存在していませんでした。採用手法(チャネル)も、兼任しているメンバーがそれぞれ別の媒体やエージェントを管理している状態でした。

――そんな状況に対して、どのように採用活動を進めていかれたのでしょうか。

まずは採用方針を固めることが先決でした。スタートアップのリソースは限られています。やるべきことは山積していますが、成果を出すために優先順位を決めなければいけません。そのため、必要な施策をポストイットに書き上げてインパクト順に並べていきました。同時に、会社の規模と成長に合わせて、「いつ」「どのポジション」を「何人」採用していくのか、経営陣と一緒にシート化(可視化)しています。

見えてきた課題は「アトラクトの弱さ」
選考におけるコミュニケーション設計を構築

――方針の結果から、どのようなことを着手していきましたか?

はじめに進めたのは情報収集です。当時、ビビッドガーデンは採用管理システムを導入していなかったため、判断材料となるデータが集約されていませんでした。まずはATS(採用管理システム)を導入し、考えうるすべての採用サービスを2ヶ月間ほど利用。データを収集しながら自社の強みや弱みを見極めていきました。
この期間には、Wantedlyから他のサービスまで、5~6社ほどの採用サービスを可能な限り活用していきました。スカウトサービスの場合は2ヶ月で300通以上のスカウトを送信しています。その結果から、媒体ごとの特徴を理解し、弊社に合う活用方法を考えていったのです。

――データ収集の結果、どのような傾向が見えてきましたか。

驚いたのは自然流入の多さです。ビビッドガーデンはtoC向けのサービスを運営していますから、TwitterやWantedlyでは社名が認知されていました。一方で、応募いただいた候補者に対してアトラクト(魅力の伝え方)が弱かった。面談で誰が何を話すべきなのか、選考におけるコミュニケーション設計が不十分な状態だったんです。候補者数が多くても、その時に必要な人材をピンポイントに口説き落とせていませんでした。

――その後、候補者の承諾率を上げるために、何をされたのでしょうか。

これらの方針決定を経て、取り組んだのが選考におけるコミュニケーション設計です。「採用媒体では興味を持ってもらう」「最初の面談はビビッドガーデンを好きになってもらう場所」というように、あらためて採用プロセスの目的を明確にしています。

以前は候補者に対して「あなたが必要だ」としっかり伝えられていないことがありました。それを解決するための具体的な対策として、選考における候補者とのコミュニケーション内容を明確に定義しています。カジュアル面談では、候補者のキャリアやビジョンを徹底的にヒアリングすることを決めました。続く面接では、候補者と思考性が近いメンバーや、候補者のロールモデルになるようなメンバーに同席してもらい、「ビビッドガーデンで働くこと」をイメージしやすい状態を提供することを意識しています。

――ゼロベースから採用体制を構築されたので、苦労も多かったのではないでしょうか。体制を整える中で意識していたことや、スタートアップに共通する「採用のノウハウ」があれば教えてください。

まずは全ポジションの業務理解ですね。加えて、ステークホルダーと方針を握り切っておくことでしょうか。HRは現場の理解が何より重要です。業務を理解するために、採用担当者は遠慮を捨て、各ポジションの会議にすべて参加する。それくらいの勢いが必要だと思います。

――規模が小さいからこそ、現場への理解と熱意が必要だと。

そうですね。ただ「決められた人数を採用することだけの人事」は現場に寄り添えきれていないと感じています。私も新卒入社した会社で「人事のあり方を変えたい」と現場目線で考えて、それがきっかけで、HRの世界に飛び込むことになりました。最近は呼ばれてもいないのにエンジニアの会議に参加して、開発状況など、組織づくりの上で欠かせないリアルな気づきを得るようにしています。

また、エンジニア採用では、弊社の技術顧問にもアドバイスをもらいながら進めています。エンジニアのチーム編成は、技術者にしかできません。人数が倍になれば、業務効率が2倍になるわけではありませんし、トレンドやフェーズによって求められる技術は異なります。私たちはIPOに向けてよりグロースしていくフェーズです。どのような技術を持つ人が何人必要なのか。技術顧問と相談しながら採用を進めています。

円滑なチームを作るため、マネージャーの定義を見直す

――今後、規模の拡大に向けて、「50人の壁」に直面することが予想されます。この壁を超えるために、人事として考えていることはありますか?

組織体制はさらにブラッシュアップしていく必要があると考えています。今までは個の力に頼ってきましたが、チームとして効率よく働ける体制に変えていかなければいけません。

「チームの力」を最大化するために、マネージャーの役割も重要です。誤解されやすい点として、「マネージャーは偉いわけではない」ということ。代表の秋元もよく「単なる役割」と言っていますが、プレイヤーとして優れている人と、マネージャーとして優れている人の間に優劣は存在しません。「チーム成果を最大化」させるためには、特定の技能に特価した「スペシャリスト」と、チーム運営に長けた「マネージャー」どちらも必要ですから。「どちらが偉い」ではなく、あくまでも「フラットな組織」を目指したいですね。

――優秀なプレイヤーをマネージャーに抜擢しても、マネジメントがうまくいかないケースはよくあります。チームビルディングに長けた人は、どのように見極めれば良いのでしょうか。

経験上、事実と感情を分けて冷静に捉え、エモーショナルとロジカルのバランス感覚に優れている人は、チーム運営がうまいと思います。感情を乗せて指示すると、相手も感情的に返してしまいますよね。結果、衝突が起きてしまう。あらゆることを俯瞰して考えられる人、ストレングスファインダーで言えば「個別化」の強みを持っている人は、円滑なチーム運営ができると思います。

――今後、規模の拡大を目指すなかで、採用における目標はありますか?

現在の目標はグロース経験者を採用すること。具体的には現在の弊社と同じくらいのアーリーステージからジョインして、100人以上に組織を急拡大していくフェーズに関わってきた方に加わっていただきたい。本当にマッチする人材は100人に1人いれば良い方なので、月間応募数を400人まで増やしていきたいです。現在は月に200人なので、今ある採用資料をSNSでの発信用にブラッシュアップし、そこからの流入を狙うなど、間口を広げようと思っています。

また、この採用資料はジャーニーマップ上の分岐点として設計する予定です。ミスマッチを防ぎ、お互い求めるものが明確にできるようなものとして活用したいと考えています。いずれにせよ、経営者と同じ目線の人材が必要な採用フェーズなので、正念場ですね。

また、職種でいうと、やはりプロダクトドリブンな企業を目指したいと思っているので、エンジニアは常に求めています。

――最後にWantedlyの運用法についてお聞きしたいのですが、ビビッドガーデンではどのように情報を発信しているのでしょうか。

弊社はカルチャーの発信を中心に活用しています。どのようなメンバーが働いているのか、どのようなチームなのかをストーリーで発信しています。

最近では、Wantedly経由でPdMを採用できました。コンシューマーゲームのハードウェアでUI設計をされていて、PdMを極め、次はスタートアップにチャレンジしたいという想いをお持ちの方でした。今から入社いただくのがとても楽しみです。また、PdMはプロダクト開発のハブになる職種のため、選考ではエンジニア、ビジネスメンバーなど多くのメンバーに会ってもらいました。それを通して「この人たちと働きたい」と思っていただけたと考えています。

――今後の「食べチョク」はより使いやすいサービスに進化していきそうですね。本日はありがとうございました。


(取材・執筆/鈴木雅矩)

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