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理念への共感をエンジンに。躍進する組織の「変わるニーズと変わらない価値観」 | #2 TBM 舟木祐介氏

注目のスタートアップの採用、組織戦略にフォーカスする『NEXT UNICORN RECRUITING』企画。第2回はハイキャリア人材さえも惹きつける魅力の源泉や、上場に向けてさらなる成長と組織づくりに取り組むTBM社ならではの採用・組織づくりについてインタビューを実施。

2011年の創業から約10年。同社は、未上場スタートアップの企業価値を調査する「日経新聞NEXTユニコーン調査2020」にて、推定評価額1,233億円で第3位にランクインし、さらにグローバルにも進出しているものづくりベンチャーです。

同社が躍進する原動力となっている商品が、新素材の「LIMEX(ライメックス)」。石灰石を主原料に、同社独自の技術で生み出される素材は、プラスチックや紙の代替となります。LIMEXは枯渇リスクの高い資源に頼らず、サステナブルな社会へ貢献する素材として高く評価されているのです。

すでに国内外で注目を浴びている同社には、大手企業で多くの役職を歴任してきた方や、化学メーカーからコンサル業界など多様なバックグラウンドの方々が在籍しています。そんな同社は一体どのような採用・組織づくりを意識して実践されているのか。

今回は、人事・採用領域のマネージャーを勤める舟木祐介氏にお話を伺いました。


舟木 祐介 プロフィール - Wantedly
https://www.wantedly.com/id/yusuke_funaki
株式会社TBM
コーポレート・コミュニケーション本部 ピープル・コミュニケーション マネジャー
舟木 祐介氏

大学卒業後、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)でキャリアをスタートし、その後JTにて、工場、学校法人海陽学園、人事、トレードマーケターを経験。前職はソニーにて、組織・人材開発を軸にHR全般に携わる。2020年、グローバルカンパニーへと成長する企業の創業期を経験したいという思いからTBMへ参画。

「実現したい世界がある」
理念実現への強い想いが組織の魅力

ーー近年、TBM様は国内外のビジネスシーンですでに注目を集めていましたが、2020年末にはTVCMの放映もあり、世間への認知も広まっている印象です。具体的にどのような事業を営んでいるのでしょうか。

弊社は、プラスチックや紙に代わる新素材「LIMEX」の開発から製造、販売を行っています。基本的にはBtoBでの取引を行っている会社ではありますが、「サステナビリティ革命を起こし、グローバルでトッププレイヤーになる」という目標の元、生活者に直接アプローチできる取り組みや新しい事業も昨年後半から本格化させました。ZAIMAというECプラットフォーム事業の開始や、再生材料を50%以上含む「CirculeX(サーキュレックス)」という素材の開発や生活者とともに資源回収を促進する「CirculeXアプリ」の発表など、様々な展開を行っています。

NEXTユニコーン企業ランキングの中では、SaaS系のサービスを提供する企業が多い印象ですが、私たちは長期目線でR&Dに先行投資を行いながら、スピード感を持って新規事業に取り組んでいます。ものづくりベンチャーだからこそ、参入障壁が高い部分もありますが、マーケットの大きさと社会へ与えられるインパクトの大きさは計り知れないと考えています。

ーーものづくり×ベンチャーであるTBM様の組織体制と部署ごとの人数も教えてください。

TBMには大きく6つの部署が存在しており、全社で約200名(本社:約100名、工場:約100名)ほどの人数です。人数が多い部署としては営業本部で、約30名、研究開発やサプライチェーンマネジメント、品質保証などを担う開発・生産本部(工場を除く)にも約30名ほど在籍。私が所属しているコーポレート・コミュニケーション本部という人事・採用、コミュニケーション、サステナビリティ、EC事業を担当する部署、経営企画本部、経理や法務などを担う管理本部は、それぞれ10名前後の社員が所属し、海外事業部に所属する社員が、数名という体制です。

ーー公式サイトなどでTBM様の経営陣を拝見すると、過去に大手企業で役職を歴任されている方が非常に多い印象です。こういったハイレイヤー人材にとっての「TBMの魅力」はなんでしょうか。

一人ひとりからヒアリングしたわけではないのですが、共通している点は「TBMの理念への共感」だと考えています。弊社は創業当時から、企業理念をミッションやビジョン、クレドという形で、社内外へ発信していました。特にクレドについて、代表の山﨑は自分の「遺言」と表現するほどTBM創業への強い想いを込めたもので、その情熱や夢に共感をしてジョインする社員が多いと感じています。

また、トヨタやパナソニックなどグローバルカンパニーと呼ばれるような企業の創業期に携わりたいという思いを持って入社している社員も多い印象です。私自身も、壮大な夢を実現させていく人・組織づくりを会社の創業期から関わることができたら「どれだけチャレンジングで幸せなことか」と考えて入社しました。

事業フェーズで変わる採用ニーズと変わらない価値観

ーーここからは採用について伺わせてください。事業の多角化によって、採用戦略に変化はありましたか。

主たるLIMEX事業に加えて、昨年、再生材料を50%以上含むCirculeXやEC事業であるZAIMAが立ち上がりました。事業フェーズが変わったタイミングであったため、採用戦略も徐々に変化させてきています。今後の事業成長に採用の観点から貢献していくためには、経営・事業の方向性を正しく捉えた上で、人員計画を策定していくことが重要だと考えています。これまで以上に、各部門の責任者とは密に対話を重ねながら、事業計画達成のために本当に必要な計画を一緒に創り上げてきました。その際、部門横断で人員計画をレビューする機会を設けるなど、部門最適ではなく、全社最適を意識しています。また、採用スピードを上げていくために、いつまでに採用するかという目標を人事だけではなく、各部門責任者とも共有し隔週での採用定例ミーティングを通じて目標達成に向けたPDCAをしっかりと回せるようにしています。

ーー全社の採用ニーズを正確に把握するために、「採用ペルソナを設計する」といった採用体制の整備も行われているのでしょうか。

はい、まさに取り組みを強化しているところです。採用ポジションの増加と複雑化に伴い採用のペルソナを改めて整理するフェーズだと考えています。昨年から採用チームも大きくなり、アプローチしたい人材の幅も広がったため、連携が必要なシーンが増えてきています。特に、採用したい人材のスキル要件は各部署の担当者と密にコミュニケーションを取り、認識を揃えなければいけません。今後も増えるであろう社内の採用ニーズへ正確に応えるため、ペルソナを設定するなど積極的に整理してきたいですね。

ーー求められる人物像について、スキル以外にも価値観といった定性的な評価軸はどのように見ているのでしょうか?

TBMの企業理念である「TBM Compass」への共感は必須だと考えています。加えて、TBMらしい行動ができるか、TBM Compassの中で定めているValuesに基づいて評価しています。

TBM社が掲げる5つのValues

ただ、こうしたスキルや価値観を書類や数回の面接だけで理解することは簡単ではありません。貴重な面接機会の質を上げるために、面接に出席する担当者にはトレーニングを実施するなど、社内の採用体制の強化も同時に実施しています。

サステナブルな社会の実現に共感する人材を増やし、
採用市場そのものを育てる

ーー近頃、TBM様は新卒採用にも取り組んでいるそうですが、育成が必要な新卒人材の獲得に踏み切った背景を教えてください。

新卒採用をはじめた意図は2つあります。まず1つ目は、将来会社の中心になれる人材を育てるためです。新卒社員は、価値観や業務を次々に吸収してくれるため、創業期の組織を経験することが将来の財産になると考えているんです。その経験を通じて、理念や価値観を次の世代に引き継げる人材に成長してもらえたら嬉しいですね。

2つ目は、新卒採用は組織のステージを一段上げることに繋がると考えています。これまでは、すでに専門性・知識・経験をもった中途採用を主としていたため、自身の成果にフォーカスが当たることが多くなっていました。しかし、弊社はまだまだ成長フェーズであり、組織を創っている途中。これからの組織を創る上で、一人だけで成果をあげるのではなく、組織全体でパフォーマンスをあげる意識や仕組みを整えなければ、若手どころか、組織全体としての成長が滞ってしまいます。そのため、新卒採用をきっかけに、「人・組織を育てる文化」を育められればと考えているんです。

ーー新卒採用は、将来への投資という意味だけではないんですね。実際に新卒採用の状況はいかがでしょうか。

ありがたいことに、ビジネス職では採用できています。TBMをニュースで取り上げていただく機会も増え、さらにオウンドメディアでの発信やWantedlyでのミートアップ開催などによって、会社としての認知が高まっているからだと感じています。一方で、理系研究職の新卒社員採用については、課題が残っています。

ーー研究職の採用は中途・新卒関わらず難しい印象がありますが、実際いかがでしょうか。

まさに、おっしゃる通りです。そもそも、中途採用においてターゲットとする製造業の人材流動性が低く、これまでも獲得が難しいポジションでした。すでに働く環境が整っている企業から、いわゆるベンチャー企業に飛び込む方は少ないのが現状です。ダイレクトリクルーティングも行っていますが、採用につなげるのは簡単ではありません。そのため、私たち自ら、「サステナビリティ×ものづくり」の採用マーケットを育てることに取り組んでいく必要があると考えています。

私たちが目指すサステナブルな未来の実現に共感してくれる方を一人でも増やすべく、実際にサステナビリティ領域のベンチャー企業と一緒に採用のイベントなどを実施しています。私たちがサステナビリティ市場で大きな成果を残せれば、この市場を拡大でき、そこに興味を持つ人も増やせます。その市場内で、弊社が第一想起を取れるような実績を作っていければ、事業に共感してくれる方が自然に集まってくるようになるのでは、と考えているんです。

現在はSDGsが一般的に知られるようになるなど、社会的な追い風は吹いていると感じています。事業で成果を残していくと同時に、Wantedlyやパートナー企業との連携、イベントへの参加によって、この新しい業界で働く意義を広める活動も平行して行っていく予定です。

成長する組織は拡大と環境整備をセットで進める

ーーTBM様のような成長を目指すスタートアップ企業へ、採用におけるアドバイスをお願いします。

1人の採用が組織に対して大きな影響を与えるスタートアップにおいては、採用を経営課題として捉えることが非常に大切です。早いフェーズで人事/採用の責任者を採用し、チームをつくったことが、結果的にTBMの組織においてポジティブに働いています。

また、採用の入口だけではなく、入社直後のギャップ解消や早期に活躍してもらうためにも、オンボーディング体制を整備しておくことも重要だと考えています。実際、弊社では入社直後に3日間の導入研修を実施し、企業理念や事業・組織の理解醸成を促しています。さらに、上司との定期的な1on1実施や他部門の社員と斜めの関係構築をするバディ制度などを通じて、入社後の活躍をサポートしています。

ーーありがとうございます。最後に、TBM様がこれから急成長するために必要だと考えている人材について教えてください。

これからは、主力事業のLIMEXだけではなく、CirculeXやEC事業などの新しい事業もさらに成長させていくつもりです。事業の成長には、必然的に組織の成長が必要となります。そうした背景から、営業や研究職、コーポレートの社員など全ての職種で広く採用を進めています。しかし、まずは新しい社員を迎えるための採用、組織づくりを進めてくれる人事担当者の採用を早急に進めたいですね。

私たちは本気でグローバルでサステナビリティのトッププレイヤーを目指して日々挑戦を続けています。大手企業と比べると環境面で行き届いていない部分も多くあると思いますが、目指すゴールのために、自分の手で仕組みや環境を創り上げていくことを楽しめる方と一緒に挑戦できるとうれしいです。


(取材・執筆協力/鎌田淳生)

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