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プロローグ
“ファッションスタイリスト“という職業をご存知だろうか。
芸能人やアーティストなど、主に表舞台で活躍する人たちの衣装を担当する仕事である。
キラキラとしたイメージの反面、わずか3年で97%の人が挫折するというデータもあるほど、非常に厳しい業界としても知られている。
実は、ファッションスタイリスト業界の歴史は意外と浅い。業界の第一人者と呼ばれる人が、現役で活躍されている現場も珍しくないという。そのため、晴れて独立したとしても、10年間アシスタント業務から抜け出せないという人もザラにいるという。
今回は、そんな業界の中でも“逸材”と評されるファッションスタイリスト、AMIに話をお伺いすることができた。彼女は現在、若くして華々しい実績をあげており、某国民的アイドルグループや年末の歌謡特番に出演するアーティスト、さらには人気K-POPアイドルなどのスタイリング依頼がひっきりなしに来ている。
クリエイターの中でも生存率が一際低いこの業界で、彼女はいかにしてその荒波を乗りこなしているのか。また、彼女が現在所属するクリエイティブチーム、Team Creative とはどのような組織なのか。インタビューを通して、彼女の活躍の裏に隠された秘密に迫ることができた。
YASUKI
「本日はよろしくお願いいたします!」
AMI
「はい!よろしくお願いします。」
業界の逸材、AMIのライフスタイルとは?
業界でも類を見ない若手ファッションスタイリスト、AMIとは一体何者なのだろうか。まずは普段の仕事やライフスタイルについて聞いてみた。
YASUKI
「普段はどんな現場に入れられているんですか?」
AMI
「本当にいろんな現場に入らせていただいています。例えば、乃木坂46さんや3代目Jsoul Brothres さんなどのアーティストさんから、ファッションショーや企業広告などです。直近ですと、大規模なコンサート会場で実施される、若者向けファッションショーに、舞台企画から参画しています。」
さすが売れっ子である。普段誰もが知るような、一流クリエイターしか関われない現場をはじめ、多岐にわたる案件を任されているとなると、その実力は業界全体に知れ渡っているようだ。
AMI
「その他には、世田谷でカフェの店舗マネージャーをやっていて。このカフェは私含め、クリエイターのみんなで2019年に立ち上げたんです。」
なんと、多忙なスタイリストの現場に加え、世田谷で大人気の隠れ家カフェも経営しているというのだ。一体どのような経緯でそうなったのだろうか。
YASUKI
「ファッションスタイリストというだけでも狭き門と聞きますが、カフェまで経営しているなんて、一体どうやったらそうなれるんですか?」
AMI
「そうですね…、色々ときっかけはありますが、たしかに私みたいなファッションスタイリストは会ったことないですね(笑)。これまでの経歴とかを話すと少し長くなるのですが、良いですか?」
飛躍のきっかけは“ミーハー魂”?
ファッションスタイリストとして、誰もが憧れる現場を任されるようになったAMIだが、一体どんな経歴を歩んできたのだろうか。彼女の飛躍のきっかけを紐解いていく。
YASUKI
「そもそも、ファッションスタイリストになりたいと思ったきっかけは何だったんですか?」
AMI
「本当に業界あるあるで、多いと思うんですけど、単純に芸能人とかアーティストに会える、キラキラした芸能界に憧れがありました。いわゆる、ミーハーってやつです(笑)。」
YASUKI
「なるほど(笑)。それで専門学校に入られたんですか?」
AMI
「そうですね、どちらかというと、ヘアメイクやスタイリストなど、裏方の方に興味を持って。どうしたら成れるんだろうと思って、いろんな学校に足を運びましたね。」
ファッションを学ぶ専門学生は現在も多い。しかし、ファッションスタイリストになるのは、その中でもごく限られた人材だけである。一体何が、AMIをそこまで成長させたのだろうか。
YASUKI
「同期で、今でもファッションスタイリストをしている人はどれくらいいるんですか?」
AMI
「同期は全部で80人くらいいましたが、今ファッションスタイリストをしているのは、私の他にもう1人ですかね…。」
YASUKI
「すごく狭き門ですね!相当勉強を頑張られたんですか?」
AMI
「いや、それは人並みでしたね。学校の授業は座学とか、教室の中でやることばっかりで。それよりも早く現場に出たくて、ファッションの企業とかにメールを送りまくりました(笑)。当時はSNSとかまだ主流じゃなかったので、現役のプロの方とのつながりもできづらくて。ただ、本当に、実際の現場で仕事を見たい思いが強かったです。」
この強い思いとちょっとした行動こそ、後の活躍を作る原点となる。
全てを変えたAIKAとの出会い
AMI
「いろんな人にたくさんメッセージを送りましたが、ほぼ返ってきませんでした。そんな中、唯一返ってきたのが、『渋谷で夜中の1時から撮影の現場があるから来れたら』という、スタイリストの男性からだったんです。」
YASUKI
「夜中の1時に渋谷!?それまさか行かなかったですよね?」
AMI
「もうなにされてもいいっていうくらい、プロの現場を見たかったので、思い切って行きました(笑)。幸い、ちゃんとした現場で、まさにそこに居合わせたのが、当時Team Creativeにいたクリエイターでした。」
今でこそ、SNSで知り合った人と実際に会うのは容易であるし、珍しくはないが、当時はかなり勇気がいる行動だっただろう。そして、そのクリエイター経由で、当時19歳だったAMIは運命を変える出会いをする。
AMI
「そのクリエイターさんに、次の現場でAIKAさんを紹介していただくことになって。今となればあれが全てのきっかけでしたね。」
YASUKI
「その後実際にAIKAに会ってどうでしたか?」
AMI
「今でも鮮明に覚えているくらい、衝撃でした。本物のファッションスタイリスト、プロとして仕事する人ってこんなにかっこいいんだと。しかもその後、AIKAさんが自分に時間をとってくれることになって。こんな人が自分に時間とってもらえるなんて、本当に言葉も出ないくらいでした。」
AIKAとは、日本のファッションスタイリスト業界のトップまで上り詰め、Team Creativeを立ち上げた人物である。彼女は現在、同チームのクリエイティブディレクターを務めている。
当時からファッションスタイリスト業界で頭角を現していたAIKAだったが、やはり他のファッションスタイリストとは一線を画すところがあったという。
AMI
「AIKAさんほど実績を持っている人も珍しいですが、何より、次世代を引っ張り上げようという思いを持っていたのはAIKAさんただ1人でした。そういった意味でも憧れましたし、『この人が描くビジョンへ私も行きたい!』『想いを継いでいきたい!』と思いました。」
専門学校では味わうことがない、プロの現場。そこにいた唯一無二のファッションスタイリスト、AIKAとの出会いがAMIを現在の活躍へと導いたのである。
Team Creativeという“最強”の組織
専門学校に通いながら、AIKAが牽引する全く新しい形のクリエイターユニット、Team Creative(TC)のクリエイターとして活動し始めたAMI。そこで早くも、業界としては異例の成長を遂げる。
AMI
「大体アシスタント業務を3年くらい、経験させていただいた後に、一人前として現場を任せられるようになりました。」
YASUKI
「アシスタント3年ってだいぶ短くないですか?!」
AMI
「そうですね、専門学校の時の先輩とかはまだアシスタントやっているそうなので、短い方だと思います。でも短いのがすごいというよりは、いつまでも上が抜けられない業界構造自体に問題がありますし、まさにそんな業界に一石を投じるのが、このTeam Creativeだと思います。」
Team Creativeの初期から共に活動してきたAMIは今、この組織をどう捉えているのだろうか。
AMI
「今となっては、デジタルのクリエイターも融合したことによって、まさに最強のクリエイティブチームになっていると思います。」
YASUKI
「たしかに、すごいたくさんのジャンルのクリエイターが集まっていますよね!」
AMI
「チームとしてできる幅が広がった、というのは大きいですね。でも、それだけではなくて、一人一人のクリエイターに『おもしろさ』という、人間性の土台があるというのが重要な気がします。私たちは『何とか屋さん』ではなく、ゼロからイチを生み出すクリエイターですから。」
クリエイターとは単に専門職を表すのではない。アイディアを具現化する表現者であると、AMIをはじめTeam Creativeのクリエイターは日々口にしているそうだ。
AMI
「このカフェも、本当に何もない場所から全て手作りで作ったんです。」
YASUKI
「ここをですか?!業者さんとかに頼まずに?」
AMI
「はい(笑)。当時は現場でスタイリングをした後、夜中から明け方まで壁のタイルを貼ったり、床を塗ったりしていました。大変でしたけど楽しかったですし、横でそれを一緒に笑いながらできる人たちがいたというのは、とてもありがたいことだなと思いました。」
受け継いできたものを次の世代へ
Team Creativeとして活動して7年、後輩だったAMIも今では先輩となりつつある。そんな彼女は今後どのようなビジョンを描いているのだろうか。
YASUKI
「今後はどのようなビジョンを描いているんですか?」
AMI
「そうですね、本当に今までは後輩という感じで、やってきてもらったことが多かったので、これからはそれを次の世代に、私がやっていく番だなと思っています。」
再現性とリレー性。T.f.a.社としても掲げる理念を体現したいと彼女は語る。
AMI
「TCを、クリエイターの誰もが憧れる組織にしていきたいですし、 カフェは駆け出しのクリエイターがアルバイトする場所にもしていけたらなと思います。先輩方が創ってきたものを、より再現性とリレー性があるようにブラッシュアップしたり、新たに生み出したりすることに、今は力を入れています。」
YASUKI
「なるほど!ご自身はどんな人物像になりたいとかってありますか?」
AMI
「当時のAIKAさんのように、自分を見て、クリエイターを目指したいという人がたくさん現れたらいいなと思っています。誰かにとっての “きっかけ” になれる人になろうと決めていますね!」
スタイリストとしてだけではなく、クリエイターとしても目覚ましい成長をしているAMI。近い将来、きっと多くのクリエイターを束ねる存在となるだろう。
YASUKI
「最後に、こんな人に次の世代を任せていきたい、とかがあれば聞きたいです!」
AMI
「そうですね・・・」
「何よりも大事なのは、“ハングリー精神”だと思います。
当時に比べて、今はチャンスを簡単に手にすることができます。
それはいいことの反面、チャンス1つに対する熱意や角度が下がっている人も多い気がします。私はTCに関われるチャンスが来た時、選択肢の一つには思わなかったです。
『自分のビジョンが叶うのはここしかない』
『何としてもこの人たちから学ぼう』
という熱意や角度だけは、誰よりも高かったからこそ、今があると思います。
技術は後からでもつけられます。熱意と人間性がある人に、私たちが創ってきたものをリレーしていきたいですね。」
リレーを受ける側から、リレーする側へ。AIKAのDNAを受け継いだファッション・クリエイターのさらなる活躍に期待が高まっている。
Episode. AMI ーFin