「いつから地方のまちづくりに関心もったんですか?」と聞かれて、そういえば地方に興味があったわけじゃないなと思い出しました。
スケールでかくてギャフンといわせられそうでワクワクしたのが理由。その仕事がたまたま新潟県上越市にあったので家族で移住しました。
いま、1万人の町、宮崎県都農町にいるのも、似たような理由。
「地方で」とか「まちづくりが」とかではなく、自分がワクワクする仕事がどこならできるか、どんな仕事かという順番で考えてます。
ぼくのまわりで日常的に耳にする都市・地方どっち論。
「まちづくりするなら都市と地方で働くのどっちがいい?」
「リモートワークOKな会社にいけば自然豊かな地方で働ける?」
「地方は仕事少なそうだから、やっぱ最初は都市かな?」
この問い自体に答えはないし、その人がなにやりたいかが見えてこないとコメントするのは難しいですよね。
個人的には、その時々で自分が優先的に身につけたいことを考えることをおすすめしています。
たとえば、優先的に身につけたいのがインプットなのか、アウトプットなのか。少し乱暴な分類ですが、それぞれの詳細を。
1.インプット重視なら「都市」
インプット重視なら、都市で働く方が地方よりおすすめです。
代表的な3つのインプット別に、その理由を考えました。
①観る
ぼくの場合は建築や商業施設がメインの仕事だったので、建物やお店を実際に現地で見ることが生命線。
いまどきWEBやStreetViewで、だいたいのことはわかるし、かえってディテールが理解できたりします。
ただし、ものや場をつくる上では、実際に存在する現場に行って、人の行き交いや、気配、音、におい、借景など五感で体感しないとイメージをもてないもの。
企画やデザインを考える上では、美術館や映画館、書店など鑑賞、観察できる対象が身近にあることは重要ですよね。
いま、1万人の過疎地に住んでいて、一番足りないなーと思うのが、上記の対象物。
観る対象物の多さは、圧倒的に都市。
②会う
10代、20代でどれだけ幅広く、たくさんの人に出会えるかが、その後の仕事の幅や質を決めるといっても過言ではありません。
数あるインプット手段で、ぼくがもっとも重要視するのは人に会うこと
若ければ若いほど、どの人に会えばいいのか、会える人はどれだけいるのかが未知なもの。
そうなると、絶対人数が多い都市のほうが、人に会える数とタイプは多くなります。
もちろん、地方でもいろんな人に会える可能性はありますが、都市に比べればタイプが少ないかなと感じてます。
③聴く
いろんなタイプの人の話を、より多く聴けることも都市で働くメリット。
講演会やセミナー、ビジネススクールなども都市のほうが種類多く頻度も高いため、自分にない知識をインプットするには有利。
最近では、オンラインセミナーやイベントも増えているので、地方でも”聞く”ことはできますが、”聴く”にはやはりリアルや対面のほうが入りがいいように思います。
2.アウトプットしたいなら地方
アウトプットは、都市でも地方でもできますが、競合するプレイヤーが少ない地方のほうがアウトプットしがいがあります。
代表的な3つのアウトプット別に、その理由を考えました。
①描く
”書く”ことは、都市でも地方でも変わりはありませんが、もう少し細かく表現するという意味合いの”描く”になると、地方のほうが有利だと思います。
個人的な感覚ですが、都市で働いていた頃に比べて、地方のほうが通勤・移動時間など物理的に時間に余裕ができたため、”描く”を含めた発信に時間をかけられています。
デザインや絵を描いたりするのにも、自然が豊かでゆとりを感じやすい地方のほうがはかどるのかなと。
②話す
話すこと自体は都市でも地方でも変わりはありません。ただ、競合するプレイヤーが少なかったり、単純に人が少ない分、一人あたりの話す量は多いんじゃないかなと思います。
地方というより移住者という意味合いで、この3年間でこんなにも自己紹介をするのか!?ってぐらい自分のことを話す機会が増えました。
実感値として、都市に比べて地方のほうが時間の過ごし方の選択肢が少ない分、夜遅くまで話すことが多いなと思います。
あともう一つ、地元の人の話を聞くことは大切ですが、ぼくがおすすめするのは自分から話すことです。自分をさらけ出していかなければ、相手からの本音は引き出せません。話術を磨くチャンスも多いかもしれません。
特に若い人は地方に絶対数が少ないから、都市ではなかなか接点が持ちにくい首長や社長に自分自身のことや持論を熱く語れる機会は多いと思います。
③やる
一番強調したいのは”やる”です。
これは都市に比べて、圧倒的にチャンスが多いと思います。
「人が少ない」「組織が小さい」「市場が小さい」という背景もあり年齢・経験・属性を問わず、やる!と決めたらやれる機会は多いです。
”描く”や”話す”は、都市でもできることではありますが、この”やる”は明確に、地方のほうが有利です。
都市に比べれば規模が小さい分、一人ではじめられることは多いと思います。ちょっとしたイベントでもプチマルシェでも。やろうと思えばすぐやれます。
すぐ”やる”ことで、失敗も数多く経験できます。そして、すぐ”やり直す”ことがしやすいのも地方かな。これを短期間で繰り返していくことで、地方にしか身につかないスキルが得られると思っています。
3.地方だからできること
ぼくらの会社のインターン大学生にも言ってるんですが「都農町に来て本読んだりネット検索しててもあんまり意味ないよね」と。
都市でもできることを地方でやってても来た意味はありません。
地方だからこそできることに最大限、時間とエネルギーは使ってもらいたいなと。そうすれば、得られることも多いはず。
もちろん、インプットとアウトプットがこんなに単純に分かれるものではありませんが、「地方だからこそできることはなにか?」を意識して働くための一つの目安にはなると思ってます。
「都市と地方、どっちで働くか?」
ではなく、
「いまの自分により必要なのはインプットだ!」
と思うなら都市で働けばよいし、
「いまはとにかくアウトプットしまくって成長したい!」
と思うなら地方で働けば良いのかなと思います。
ぼくの場合、20代後半は地方、30代・40代は都市、そして50代は再び地方で働いていますが、結果的にアウトプットとインプットを往来させることができていいバランスになったんじゃないかなとポジティブに捉えてます。
アウトプットする効用は、最近読んだ、出口治明さんの『なぜ学ぶのか』でも紹介されてました。
日本では、勉強というと、本を読んだり、授業を受けたり、インプットをたくさんすることだと考える人が多いようです。でもインプットだけでは、なかなか身につきません。インプットしたものを、いったんアウトプットすることで、自分のものになるのです。アウトプットとは、自分の中から外に出すこと。つまり、話すことや書くことです。
脳科学でも、インプットのみの学習より、インプットにアウトプットを足す場合の方が、情報が脳内に整理され、理解が深く、長く記憶に残るとされています。
『なぜ学ぶのか』
いまのぼくは、再びアウトプットに燃える時期。前職で20年間インプットしたことを、自分の中から外に出したい。そのために、とにかく、やれることはすべてやりながら、失敗して、また考えてすぐやる、ということを繰り返したいと思っています。
それだけ地方のまちづくりには正解、方程式がなく未知なので。