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制作のウラガワ〜ダイナモ史上初の挑戦〜

ダイナモアミューズメントと円谷プロダクションが共同開発した『ウルトラセブン THE ATTRACTION 史上最速の作戦』。長年愛され続けているヒーロー「ウルトラセブン」初の体験型VRアトラクションとして、2023年12月1日に東京ドームシティにて初リリースし、さらにルミエール・ジャパン・アワード2024にてVR部門特別賞を受賞!
色々な挑戦があったというこちらのコンテンツには、どのような作戦があったのか…。

今回は、制作メンバーに制作時の話をインタビューしました!


<登場人物>

制作のはじまり

ーーーそもそもの企画のきっかけはなんだったのですか?

黒坪:円谷プロさんから「『ウルトラセブン』を題材に、長年愛されるアトラクションを作りたい」というご相談をいただいたのがきっかけです。『ウルトラセブン』は交流と理解がテーマなのでストーリーの追体験をしようというのが最初の草案でした。
ただ、先方の要望であった「長年愛されるアトラクション」を念頭に、色々な人が訪れる遊園地に置けるものと考えると、元のストーリーを知らない人でも楽しめるようなものにしようと考え直しました。
せっかく円谷プロさんとダイナモで共同開発するんだから、うちの強みである体感があるものにしたいと企画を再考し、スリルを求める若者をターゲットに、スリルアトラクションとして企画を作っていくことにしました。

また、当時ちょうど『トップガン マーヴェリック』が上映されていて観たら、「これをやりたい!」とハマったので、参考にしましたね。この時に「最速体験」というコンセプトが固まりました。劇中で登場するメカ「ウルトラホーク1号」が駆け巡るのを吉田くんに動きをつけてもらったらどうなるのかワクワクしました。

ーーーどういう流れで作っていったのですか?

中村:企画書の段階で大枠のストーリーは決まっていたので、それに合わせて、脚本を書いていきました。円谷プロさんと一緒に“このキャラクターならこのセリフはこう言う”とかを話し合い、内容を決定させました。実は今回のアトラクションを制作するにあたり、背景にある1話分のストーリーを、円谷プロさんと話して設定しているんです。今回のアトラクションで体験できるのはその1話分のストーリーの一部分になっているって感じです。

脚本を元にウルトラホーク1号がどう進んで行くのかイメージスケッチを描き、そこからVコンを制作しました。その際に何人かの社員に協力してもらって、社内で人形を使って動きを撮影したり、仮ナレも社員で録ったりしました。実際に一人称の視点で撮影してみて、こう見えてたらいいのかなとか、ウルトラホーク1号はこういう動きをするよねとか色々確認できました。


黒坪:回転するところとか、結構Vコンのまま映像を作ってもらえました。

イメージスケッチ

実際の撮影の様子

中村:CG作業を始めるにあたって、このVRアトラクションの楽しさを言語化したり、絵だけで伝えきれなかったので、特撮みたいな感覚で1回実写で動かしてみたらいいんじゃないって思ってやってみました。子どもの時にやっていた人形遊びみたいな感じです(笑)。
あとは、Vコンの段階で仮SEを本番に近いくらいの精度で付けました。おかげでプリビズの初稿から、ある程度体験の感覚が分かるものになっていました。CGチームに感謝です!


没入感を高めるために

ーーコンセプトである「最速体験」はどのように実現させたのですか?

黒坪:ダイナモでは『ウルトラ逆バンジー』という落下体験のコンテンツを開発・制作していたので、その知見を活かし高速飛行体験が実現できると思っていました。
風による圧力で、顔が曲がるようなものを当初考えてました。芸人さんがやっているような。

三浦:それを実現させるためにブロワーを最初に検討しましたが、想像以上に音がうるさかったのと、さらに電力的な問題も出ました。これを16席分(体験人数分)設置するので16個置くとなると、やばいぞと。なので色んな施設に設置できるようにするということを考えると現実的ではないと判断しました。また、風が強くなるまでの立ち上がり方もイメージと異なりました。それで今度は、サーキュレーターをいくつか比較し選定することにして、会議室でそれぞれ検証しました。特に、ゴーグルをつけた状態で風を浴びてみてどうかを見てみたくて。

黒坪:色んなものを試して、最終選考に残ったのが、下の写真の4つですね。

中村:髪の長い社員を呼んできて、体験してもらってなびき方も確認したよね。「なんの実験ですか?」と怪しまれました(笑)。

当時の検証の様子

三浦:動線の確保のため、実際に座る位置とサーキュレーターの距離はある程度決まっていたので、距離を測った上で風力を比べ、テストしました。
実際の場所で、動線をどのくらい確保しなきゃいけないとか、電力をどれくらいに収めなきゃいけない、取り扱いをできるだけ簡潔にしなければいけない、耐久性について、など様々な制約がある中でコンセプトを実現するのは大変ですが、やりがいでもあります。

中村:サーキュレーターだけでなく、MX4D®モーションシートに備わっているフェイスエアも重視しましたね。

三浦:フェイスエアというのは、MX4D®のアームレストに備わっているもので、顔に空気を当てるエフェクトです。フェイスエアの風量の調整はモーションチームと連携してベストなバランスを探しました。

吉田:顔面のエア噴射を効果的に使うために、ここぞという時にしか使わないようにして、風力もメリハリをつけた演出にしました。

中村:フェイスからでている風の音もいい味が出てます。実は本来はもう少し遠い位置にあるのですが、それを近づけないかと思って、無理言って位置を変えました。
あとは、風のSEを入れることでより風が吹いていると感じることができて、それも最速体験の要素の一つです。ブロワーはめちゃめちゃ物理的に風が来るんだけど、それと同じような体験にはなったんじゃないかなと。
実はリサーチしてみると実際の戦闘機は音速を超えるとコックピットの中は静からしいんです。でも、リアルに合わせ過ぎるとアトラクションとしては成立しないので、「こういう音があったら音速を超えてるように感じる」というのをイメージして風のSEだけではなく、結構色んなSEを入れてるんです。
あと、それをより感じるようにするために、三浦さんにお願いして、音響の設計もしていただきました。

三浦:今アトラクションの音響システムは、2.1ch (ステレオスピーカー+サブウーファー)に加えてVRゴーグル内蔵のヘッドホン2chという形を採用しています。ヘッドホンとスピーカーの使い分けによって奥行きと立体感、サブウーファーによってウルトラセブンの巨大感やコックピット内の轟音感を演出しました。音の作成とミックスを手がけてくださった方が素晴らしい音にしてくれたこともあり、とても良い臨場感が生まれていると思います。

中村:そういう風にVRを装着しているというのを利用して、没入体験が高まるような工夫をしています。


ーーー体感を生み出す工夫はどういうことをしているのですか?

黒坪:今回のウルトラセブンのアトラクションは手前のコックピットは6DoF(頭の動きに加えて、移動が認識されるもの)で、コックピット外のストーリー映像は3DoF(360°映像)の2つを組み合わせて制作しております。これはダイナモのコンテンツでもある「コスモバルーン」の知見を活かしました。

組み合わせることでよりリアルな遠近感とスケール感を伴った映像体験を実現することができ、これにより、本当にウルトラホーク1号を操縦している感覚を得ながら巨大怪獣との迫力あるバトルを体感できるようになっています。

三浦:全てをリアルの動きに合わせるわけではなく、うまく錯覚させるようにしています。リアリティを追求して、ウルトラホーク1号の動きに合わせてコックピットも動いた方が臨場感がでるんじゃないかというような検証も行ったのですが、思っていたような迫力は出なかった上に、酔いやすくなってしまいました。なので、自分のいる空間は絶対値として目の前に固定し、動かさないようにしています。アトラクション制作では理屈よりも体感を重視しているんです。


吉田:モーションチームはそういう嘘をたくさんついています(笑)。例えば、冒頭のカタパルトが横に滑っていく場面では、実際のモーションシートは横滑りできないのですが、横移動しているような錯覚をさせるモーションプログラムを組んでいるんです。実際はそういう風には動いていないんだけど、映像と同じように自分が動いていると感じさせるようなテクニックを使っています。


吉田:細かいですが、慣性の法則なども使っています。映像が止まっても、モーションシートはもう少し動いたりというような。
映像の方を、モーションシートの都合に合わせる形で変えてもらったところもあり、ちゃんと映像とモーションシートを連動させることで、体感を創り出すことができました。そういった柔軟な対応をしてくれたこともあり、満足感のあるコンテンツができたと思っています。
また、モーションシートの振動は音に合わせてつけているんですが、例えば爆発の音も細かく分けて捉えてそれに合わせてつけています。「ドカーン」ではなく、「ドッ」や「ゴォーン」など細分化し、振動もそれに合わせることでチープにならず、臨場感を生み出しています。

この制作を経て見えたこと


ーー制作を通してよかったことを教えてください。

黒坪:企画)円谷プロさんの課題、ダイナモの課題など様々な要望に答えつつ、自分のやりたいことも加えられたことです。自分が企画をする上での軸にもなりました。また、新しい体験に挑戦できたことですね。その知見は財産にもなりますし。

中村:制作D)元々子どもの頃から『ウルトラセブン』が好きで、いつか関われることができたらと思っていたので、制作できたこと自体が嬉しくて。クリエイター人生の中で夢が叶ったタイミングだと思いました。実は、ホントに偶然なんですが、企画ができた時が自分が入社したタイミングで、すぐに関わることになりました。僕はミラクルマンだと思いましたね。あ、これ原作のセリフです(笑)。
いかにファンの気持ちを持ちつつ、誰が体験してもスリルアトラクションとして楽しいものを作るかが醍醐味でしたね。声優さんの起用や本編で使われていたものを再現したり、ファンの方が喜んでくれそうなポイントもいくつか入れています。

また、アトラクションにするために円谷プロさんに相談し、原作にはないけど、基地からの発進シーンにシャッターを入れさせてもらいました。基地という閉鎖空間から、発進すると同時にシャッターが開くことで視界の広がりを作り、驚きの要素をいれています。

三浦:テクD)制限もある中でどうやってやりたいことを実現していくのか常に検証をしながら進めないといけませんでしたが、それが形になって、楽しんでいるお客さんを見て嬉しくなりました。

中村:プリビズ2稿くらいで三浦さんがジョインしてくれて、プリビズをみて「めちゃめちゃ面白い!」って言ってくれたのが印象的でした。

三浦:正直、他の案件も大変な時期でしたが、プリビズをみて面白くなりそうだと思えたので、がんばれました。


吉田:モーション)MX4D®プログラミングの業務は基本、完成した映像を渡されるだけで映像の内容について要求できる機会はほとんどないケースが多いんです。でもこの企画は初期の段階から関われたので、より良い体験を目指して映像と4Dの両側から突き詰めていけたのが楽しかったです。プリビズに仮モーションをつけて初めてテストしてみた時に「これはすごい!すぐにリリースしてもいいくらいの体験の質がある!」と手ごたえがあったのを覚えています。方向性があっていると確信できたから自信をもって取り掛かれました。


ーーー大変だったことはなんですか?

黒坪:自分は企画が大変でした。実は、企画コンセプトが決まってから、提案書を作成するのにやり直しを23回くらいして、1ヶ月くらいかかりました。コンセプトが決まって、市場にどう落とし込むのかが課題でしたね。最初の企画書を見るのがちょっと恥ずかしいくらいです(笑)。でも自分のスキルアップになりましたね。
ただ、新しい技術、新しい機器の使用など、各々が大変だったと思います。

三浦:技術面でいうと、ゴーグルを安定させることですかね…。映像の位置をピッタリ合わせられる正解がなく、こっちが合うとこっちが合わないみたいないたちごっこで…。
あとは、同じ空間にいても各々のコックピットにいるというのが難しかったです。

中村:コックピットの中に、定位置を作って安定させることが難しかったですね。

黒坪:6DofとMX4D®︎を組み合わせたライドアトラクションがなかったので前例がなく、大変でした。
奥行きが入ることで、縦横無尽に動くので、コックピットの位置がなかなか合わなくて…。
そこの課題は多かったですね。社内で何度か検証して、プロジェクトのチームみんなで打開策を練りました。

社内での検証の様子

ーーー困難なこともチームみんなで解決していったんですね。

「驚きの体験」のウラガワ

ーーー最後に、こだわりポイントを教えてください。

黒坪:ダイナモの強みを発揮でき、体感のあるアトラクションができたと思います。どう体感を生み出すかをみんなで追求して制作できて良かったです。

中村:ライドアトラクションなので何回も乗って欲しいと思い、VRという特性を活かして、いろいろな方向をみても楽しめるものとして作り込みました。
アトラクションという軸はぶらさずに、どんな人でも楽しめるものとして、驚くポイントもいくつかいれています。脚本を作った時に、ここでこういう気持ちにさせるなどメリハリをつけてたり、映像としてカットは入らないけど一連の流れでシーンが変わったように見せて、4分間楽しんでもらえるように作りました。

三浦:オペレーションの負荷を減らすように考えたことですね。実際に運用するのは現場の人なので、トラブルが起きた際の扱いやすさもポイントです。

三浦:このコンテンツに限った話ではないのですが、ダイナモは「驚きの体験」を提供するために開発した他にはないシステムを、各ロケーションの現場スタッフさんに扱ってもらわないといけません。どんなスタッフさんが扱うかわからないですし、使ったことのない機器に触ってもらわないといけないので、扱いやすさを考えることは必須です。
お客さんのオペレーションに注力できるように、シンプルな運用を考えています。
なので、ゴーグルの置き方からスタートの時に押すボタンまで、現場スタッフの立場になって検討して運用を作っているんです。


ーーー企画から実際の運用まで、各ポジションならではのお話を聞くことができました!

みなさんありがとうございました!

今回のインタビューでは、ダイナモ流の制作のコツや、このプロジェクトを通して見えてきたことなど、アトラクションを体験するだけだと気付けない裏側まで深掘りすることができました。少しでも興味を持っていただけたり、ダイナモで働くイメージの手助けになっていたら嬉しいです!

当アトラクションについて、東京ドームシティ アトラクションズでの稼働は2024年12月1日に契約期間満了のため稼働終了していますが、新たな場所への移設のための作戦を進めています。

もっと話を聞いてみたい!という方、ぜひカジュアル面談しましょう!
ご応募お待ちしております!


© TSUBURAYA PRODUCTIONS Co., Ltd./ © Dynamo Amusement, Inc.






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