豆図AIキャプチャー | ANDPAD(アンドパッド)
ANDPAD豆図AIキャプチャーの活用で、従来、構造図から豆図に該当する箇所を1つずつ手作業で保存していた作業をAIで自動化。マンションやオフィスビルなど大型建築物の施工における、豆図付き黒板作成作業が大幅に効率化されます。
https://andpad.jp/products/mamezu_ai
アンドパッドのデータ部 部長 兼 データスチュワードとしてビジネス課題解決に奮闘している土居 啓司さん。2023年7月に建築・建設業界待望のAI機能をリリースさせた立役者です。
前職からデータ活用の分野で活躍してきた土居さんが、アンドパッドで実現したかったこととは? 理想を追求して構築したアンドパッドのデータ部の特徴、データ部が目指す未来などの話とあわせて聞きました。
株式会社アンドパッド
データ部 部長 兼 データスチュワード
土居 啓司(どい けいじ)
新卒でソフトバンク株式会社に入社し、ビジネス企画に従事。その後、ビッグデータに出会い、データサイエンティストに転身。LINEモバイル株式会社に出向後は、DMP/MA基盤の構築、ソフトバンク社への吸収合併プロジェクトのPMを担当。2022年4月にアンドパッドへ入社。同年に新設されたデータグループのマネージャーとして、Bizとデータ部の橋渡しを担い、ビジネス価値を創出する「データスチュワード」を担う。2023年7月より部長就任。
―アンドパッドのデータ部がBizと連携し、かねてより取り組んできたAI機能がリリースされました。どのような機能なのか教えてください。
建設施工管理の仕事には、まだまだデジタル化されていない部分が存在します。その一つが、建設現場の工事黒板作成です。
ここでの「黒板」とは、建設現場で工事写真を撮影する際に配置する、工事の詳細(工事名・撮影日・立会者・工種・施工状況など)を記したパネルのことを指します。これは、工事会社が自社の施工品質を証明するための重要な資料です。
建物を建てるためには、大量の写真と図面が必要となり、それに伴って黒板および黒板付き写真も増えます。すでに「ANDPAD黒板」というプロダクトがリリースされており、黒板を電子化し管理できるようになっているのですが、それでも手作業が必要となる部分があります。
具体的には、写真だけでは伝わらない撮影位置図や部分拡大図などの情報を「豆図」として、手作業で黒板に挿入しているのです。その際、膨大な構造図の中から、この「豆図」を探し出してキャプチャーし、さらにトリミングして貼り付ける作業は手間がかかります。1枚ならまだしも100枚もあれば、相当な工数が必要になります。オフィスビルや商業施設など建物が大きければその分「豆図」が必要な箇所も多く、膨大な手間がかかっているのが現状です。
その手間を大幅に省くのが、AIを活用した「豆図AIキャプチャー」機能です。構造図から自動で「豆図」を抽出し、保存することができます。これにより、かかった時間を建物の完成に向けた「価値ある時間」へと振り替えることが可能になりました。しかも、使えば使うほど学習機能が働いて精度が向上します。
※豆図AIキャプチャーの製品ページ
―そのAI機能の生みの親ともいえるデータ部について教えてください。
データ部は「Data Driven Team」「Data Platform Team」「ML Product Dev Team」の三つに分けられています。Data Driven Teamのミッションは、社内メンバーのデータを活用し、意思決定を支援することです。
このチームにはデータサイエンティスト、データアナリスト、そしてデータスチュワードが所属しています。データをモニタリングするためのダッシュボードを作成するだけでなく、そのデータに基づいた意思決定を文化レベルにまで浸透させていくことがData Driven Teamのミッションです。
データスチュワードはBizサイドに深く関わり、要望に対応するだけでなく、主体的に課題を探し出し、それを適切に共有するとともに、必要に応じてプロジェクトを立ち上げて課題解決に取り組んでいます。
Data Platform Teamでは、データエンジニアが中心となってANDPADの全てのデータを整備し、使いやすく、安全で、信頼性の高いデータプラットフォームを構築しています。今回のAI機能開発においては豆図部分をAIで判定する推論用のサーバー構築を行い、さらに継続的にAIの性能向上を実現できる基盤構築まで実現してもらいました。今後のAI開発においてもこの基盤を用いた開発が行われるので、今回はその礎を作ったと言っても過言ではないでしょう。
ML Product Dev Teamでは、機械学習エンジニアが、機械学習を活用した競争優位性のあるプロダクト開発を担当しています。今回のAI機能開発においてはPoCを担ったチームです。AI系の機能開発においてはそもそも十分な性能が出るかが不透明なので、機能開発の前にPoCを行なうのが通例なのですが、求められる水準まで粘り強く性能向上を図り、チームで成功に導きました。
―土居さんは現在、データ部のマネージャーやデータスチュワードとして活躍していますが、前職ではどのようなことをしていたのですか。
前職のソフトバンクでは、ソフトバンクのWi-Fi位置情報と契約者情報を活用したターゲティング広告のプロジェクトに携わっていました。そのプロジェクトでビッグデータに触れ、データサイエンティストに興味を持ち、自己学習を始めたのです。
その後、LINEモバイルに出向し、一人でデータ関連の仕事を担当しました。データの散在などの問題に取り組み、データ基盤の構築から手がけました。また、データを活用したターゲティングセグメントの設計から分析までやったので、データエンジニア/データサイエンティストの仕事を一通り経験したことになります。
それまでの経験を踏まえ、「もう一歩踏み込んで組織の課題に貢献するデータスチュワードになりたい」という思いが芽生えました。そして、アンドパッド入社後にデータ部を再編し、マネージャー兼データスチュワードになりました。
データを取り扱う上でありがちなのは、「ダッシュボードだけを作って使われていない」、もしくは「一部の人しか使っていない」という状態です。信頼性のあるデータを提供し、日々データを確認してもらい、意思決定につなげてもらえることを目標にしています。
私たちが取り組んでいるデータ活用プロジェクトの一例として、カスタマーサクセスとのプロジェクトがあります。プロダクトをお客様に提供し、そのプロダクトを使用してもらうために、カスタマーサクセスメンバーがユーザーと協力して実際の使用方法を教えたり、必要に応じてユーザー毎の利用状況を確認したりしています。
重要なのは、ANDPADの利用状況をデータを元に把握し、プロダクトの適切な活用が行われているか確認することです。カスタマーサクセスはデータに基づいたアプローチを取り、お客様の成功をサポートするためにデータを活用しています。これは私がデータスチュワードになってから初めて注力したことです。
ーANDPADの利用状況のデータの話が出ましたが、アンドパッドが取り扱うデータには、他にどのようなものがありますか。
主要なデータは施工管理に関連するものが中心です。案件ごとの進捗状況や工程を把握するための図面や資料のデータが大量に存在します。
また、営業・売上・予算・入金・アフターサービスなどに関するデータを一元管理する「引合粗利」や、紙の帳票作成、受領データの入力、帳票への押印、郵送またはFAX送信、受領後の帳票のファイリング作業などの定例業務をクラウド上で完結させる「受発注」に関するデータも取り扱っています。さらに、チャットなどのコミュニケーションに関するデータも存在します。
アンドパッドはバーティカルSaaSとして、建築・建設業界に特化したデータを保有しています。初めてそれを見た時、そのデータの種類に驚きました。同時に、これらのデータを適切に活用すれば大きな価値を生み出せると確信しました。
先ほどカスタマーサクセス部門におけるデータ活用事例を紹介しましたが、最近ではプロダクト開発の文脈でもデータを活用しています。具体的には、リリースされたプロダクトが適切に活用されているかを確認できるダッシュボードを提供しています。今後は、機能の効果を測定するためのABテストや因果推論なども実施していきたいと考えています。
ー最後に、これからやりたいことを教えてください!
「データによる継続的なビジネス価値の創出」というデータ部のミッションの実現です。現在はデータドリブンなカルチャーが確立されつつあり、建設業界の働き方にも変化が起きていると感じられるようになりました。ML(機械学習)の文脈で言えば、データの活用により生産性が飛躍的に向上するので、顧客や業界に対して大きなインパクトを与えられるはずです。
お客様自身がANDPADの利用状況を分析できるサービスの展開も計画しています。利用状況のデータを見ることで業務改善をスピーディに実現できるようになるはずです。
つまり、ANDPADのプロダクトを使うことでお客様自らチームの状況を定量的に把握し、改善を重ねていき、どんどん組織が強くなる。そんな未来を描いています。
アンドパッドでは、建築・建設業界全体の生産性を改善するプラットフォーム化の実現を目指して開発を進めています。まだまだ成長過程にあるプロダクトにおいて、建築・建設業界に寄り添いながらDX化を進めていくためには、開発体制のさらなる強化が不可欠です。
ANDPADを通して、建築・建設業界を変えていくための開発をしませんか?